英国の女王エリザベス2世が死去したことを受け、その「遺産」は王位とともに新国王チャールズ3世へ引き継がれた。
宮殿などの不動産や絵画コレクションといった富が対象で、君主から君主へ継承される資産は相続税が免除される。王室に帰属する不動産は多くの収入を生み出しており、その利益は宮廷の維持管理や公務にあてられている。
英日曜紙サンデー・タイムズは5月に公表した英国の富裕者ランキング「リッチリスト」で、女王の個人純資産を3億7000万ポンド(約600億円)と推計した。
英国では相続税率が40%で、原則として32万5000ポンドを超す部分が課税される。だが君主の遺産相続においては適用が免除されている。
王室と政府が2013年に交わした覚書には「君主が伝統的な役割を果たし続けるとともに政府からある程度の経済的独立を保つため、十分な私的資源が必要だ」と明記されている。
君主は相続税だけでなく、所得や資産の売買差益(キャピタルゲイン)にも納税の義務がない。だがエリザベス女王は1993年以降、自発的に納税してきたらしい。
一つの時代が終わった感が英国ではあるだろう。